36.【解剖】腓骨の働き&唯一筋肉が付着していない骨『距骨』
2013.7.6(土)
今回は膝下の骨の1つである「腓骨」の働きと全身の骨の中で唯一筋肉が付着していない骨「距骨」についてです。
腓骨は下腿にある2本ある骨のうちの細い方です(下記図参照)。
高岡英夫著「究極の身体」によれば腓骨の役割とは
①ショックの吸収
②足首から先の微妙な働きに関与
とあります。
大切なことは体重を支えるのは腓骨の主な働きではないという点です。体重を支えるのは膝下の太い方の骨である「脛骨」になります。
これはロルフィング的にも重視しています。
※ロルフィングでは脛骨ではなく、脛骨の真下にある「距骨で立つ」といった表現をします。
ロルフィングのセッションでは地面に脚を支えられた状態を「サポート」と呼んでいます。
上手くセッションが行くと地面から両脚にスーッとしたラインが見えるのですが、個人的には自然に脛骨に乗れた状態を「サポートが通る」と解釈しています。
今回は腓骨の働きや距骨について説明したいと思います。
足首の背屈時の腓骨の動き
腓骨は足首と関連して動きます。
◆上方に平行移動する(距骨の形状による)
◆外側に平行移動する(距骨の形状による)
◆内側に回旋し、後ろに平行移動する(靭帯の働きによる)
※腓骨の平行移動は1~2mm程度と小さい
足首の底屈時は上記とは逆の動きが起こります。
この腓骨の動きによりショックを吸収する働きはありそうです。詳細は今後の研究が必要でしょう。
足関節と腓骨の関係
距骨が脛骨と接する関節面は後側よりも前側の方が5mmほど幅が広くなっています。
距骨を脛骨と腓骨で挟み込むソケット構造をしており、足関節を背屈(つま先をもちあげる動き)では前方で挟みこまれ、底屈(地面をける動き)では後方で挟みこまれます。
つまり関節面の幅の数mmの差を調節する為に挟み込む幅の調節をする必要があり背屈時にソケットの幅は最大になり、底屈時では最小になります。
澤口祐二著「アウェアネス介助論上巻」によれば足先をあげた背屈時には足はしっかり固定されるが、足先を下げた底屈時には固定が不十分で上下左右に動き易くなるとあります。
距骨は唯一筋肉が付着していない骨
解剖学的に重要な点は距骨は身体の骨の中で唯一筋肉が付着していない骨だということです。
これは何を意味しているかと言えば、ハイヒールを履くなどカカトを持ち上げた姿勢を保つ場合、関節自体はグラグラしやすくなっていること。そして、距骨には筋肉が付着していないので距骨を直接コントロールすることはでききないこと。
その為、楽にこの状態を維持する為には身体全体で距骨を絶妙にコントロールする高度な身体能力が必要とされます。
バレエではつま先で立つので更に高度な能力が必要です。
それほどの身体能力がない場合には身体を固めて対処することになり足首をくじく、ふくらはぎ・背中・腰・股関節を痛める、肩がこるといった原因になります。
距骨をコントロールするには距骨や脛骨で立てることが前提になります。腓骨側で立つということは無駄な力をいれるということです。
脛骨・距骨で立つ為のワーク
ロルフィングには「ニーベンド」という立った状態で股関節から上は動かさないようにしながら膝をスクワットのように曲げ伸ばしするムーブメントがあります。
このニーベンドでは足関節は底屈・背屈を繰り返すので上記の腓骨の動きを誇張(ほんの少しだけ手で押すようにサポートする)してあげると脛骨で立つ感覚が徐々にでてきます。
脛骨で立つということは実は全身が関係しており、脛骨だけでなく大腿部や股関節、骨盤、背骨が関係していますのでこのワークだけで解決するわけではありませんが、それでも非常に助けになるワークです。
これはフランクリン・メソッドのボーンリズムの考え方を取り入れていますが、筋膜だけでなく、骨格の動きも理解できるとセッションの幅が広がりますね。
【注意】
注意点としましては意図的に脛骨、距骨で立とうとしないことです。あくまでも身体の構造通りに身体を操った結果起こる身体運動です。無理やり形だけやろうとすると上半身を後ろに倒したり、内股になったりとよいことは全くありません。
また、脛骨・距骨で立つ精度にも段階があります。パフォーマンスを高めるといった、より高度な段階にいくには日常的な取り組みが必須です。
参考文献
『究極の身体』
『からだの構造と機能Ⅱ』
『カパンディ関節の生理学Ⅱ下肢』
『動きの解剖学Ⅰ』
『アウェアネス介助論上巻』
2015年8月28日(金)
●ムーブメント5シリーズを修正・加筆しました。
2015年4月13日(月)
●コラムに45.【身体】正しい【立ち方】を追加しました。
2015年4月12日(日)
●コラムに44.【身体】脱力と体軸を追加しました。
2014年1月31日(金)
●ダンサーの為のロルフィングページを追加しました。
2014年1月25日(土)
●コラムに43.【解剖】肩甲骨と前鋸筋を追加しました。
2013年11月3日(日)
●コラムに42.【解剖】骨盤・仙腸関節の動きを追加しました。
2013年9月17日(火)
●おススメ本に13.『ホンダ イノベーションの神髄』を追加しました。
2013年9月16日(月)
●コラムに41.身体のゆがみ:O脚のメカニズムを追加しました。